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  • 月刊俳誌 -流-
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発

涼風を馳走としたる峡去りぬ 連発の花火の下の恋いくつ 夏空や一川をもて郷頒つ 秋めくと日は大仰に地に沈み 蜩に紛る瀬音かその逆か しづかなる風が野を這ふ夏の暮 

2014.09.10 04:40

黒

夏杉の斧鉞を知らず火を知らず 蟻の列黒のベンツを出て西へ 根底に蝉のこゑあり青銅忌 放屁して寝間の薮蚊を驚かす 列島の縁舐めて夜の野分過ぐ ぢりぢりと峰を押しやる青田かな 

2014.08.10 06:40

緑

滝壺に滝突き刺すを永久と云ふ 緑蔭や赤子睡りのほか知らず 山の雨まぢへて市民プール満つ 炎天を戻る子の口一文字 薫風や家系にひとり女児加ふ 雲吐きて夏の伊吹の男振り 

2014.07.10 06:34

植

百千鳥山駆け下る高圧線 母やさしその母やさし蓮華草 老いたれば自慢と愚痴と心太 全身を見せ蛇泳ぐ吉か凶か 保育器にいのちひとつを容れて初夏 隅を妻植ゑて全き植田かな 

2014.06.08 23:55

残

碧潭へ水沈みゆく花の昼 残雪の奥嶺を据ゑて葬の村 卵黄に血の一点や春疾風 日も風も諸手にあふれ四月かな 下山してわつと姫著莪群生地 母の日の近し静かな木が1本 

2014.05.09 02:50

棄

信濃路のひばりは空に溶けやすし 故人また少し若やぐ弥生かな 草青む客なきバスの過ぎて昼 放棄地の横も放棄地いぬふぐり 卒業の子らを見てゐる鬼瓦 春風を呼び常滑は哀しき町 

2014.04.09 09:15

影

きさらぎや鏡の吾に見られをり 春寒の影濃く湧きて人となる 日も風も諸手にあふれ二月尽 下萌や影落とし翔つ大鴉 鳶飛んで斑雪伊吹となりにけり 春時雨円空仏は耳朶持たず 

2014.03.09 08:10

気

冷たさの底に鯰も鮒も寝て 夜気連れて寒気降りくる天狗岩 水仙や町は眠りの縁にあり いはばしる水の音より寒明くる 風花や空の剥落続きをり 磊落の漢の来れば春めきぬ 

2014.02.08 21:45

酒

冬山の臍に凭れて十戸ほど 酒飲んでおのれ眠らす師走かな 里の灯を星に加へてクリスマス 年詰まる眼前低く臥す山も かつと眼を開け極月の夜の底 純白の月日ひろがる新日記 

2014.01.09 13:25

谷

雨さつと泡立草の岸を過ぐ 秋霖の日がな古塔を閉ぢ込めぬ 美濃も奥落葉松枯れてみな枯るる 冬深むまして谷這ふ単線は 唇を切つて血が出て十二月 冬の京へうつつの町をひとり発つ 

2013.12.08 00:14

紅

曼珠沙華土中より紅絞り出す 稔り田の風を夜明けの匂ひとす 後生まだ視野にあらざり新酒酌む 蓑虫も乗せしかノアの方舟は 流星の落ちゆく先の空木岳 どこまでも空どこまでも草紅葉 

2013.11.08 00:09

仏

秋しぐれ他所語ばかりの軽井沢 木曽越えの雲つぎつぎと蛇笏の忌 金色の仏具仏壇秋簾 職退きし身なれば古酒を酌むばかり 傘立の傘の長短秋澄めり 自死ありぬ秋の池面の真つ平 

2013.10.08 00:07

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