きさらぎや鏡の吾に見られをり
春寒の影濃く湧きて人となる
日も風も諸手にあふれ二月尽
下萌や影落とし翔つ大鴉
鳶飛んで斑雪伊吹となりにけり
春時雨円空仏は耳朶持たず
美濃の根尾に樹齢千五百年を越すエドヒガンザクラの古木があります。散り際の花びらの色から淡墨(うすずみ)桜と名付けられました。亡き金子青銅の句に「淡墨の桜巨樹には巨魂あり」の一句があります。時の長さが奇怪と言えるほどの樹相を生み出し、将に「巨樹には巨魂」の印象です。即位前の継体天皇自らのお手植えと伝えられています。
「淡墨の桜一枝が指す雪嶺」の自作があります。この桜が満開となるころ、北方の能郷白山(1617m)を始めとする越美国境の連山はまだ真白な雪で覆われています。桜からは直線距離にして約15km。薄墨桜の花は千五百年もの間、雪白の山々を眺めて生きてきたことになります。
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