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  • 月刊俳誌 -流-
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無

老人のヒコヒコ歩く夏景色 立秋や寄り来る山と去る山と うつむきて無言の拒絶ソーダ水 ビルへ落つ閻魔の舌に似し西日 墓洗ふ空の青さを引き寄せつ 牛馬見ぬ歳月重ね狗尾草 

2015.09.03 23:30

眼

灯取虫まづ眼が眠り脳が寝て キーボードひたすら叩く暑の盛り 音もなく雲海峯へ崩れ落つ 金輪際会はぬ人の名夏猛る 夕顔や人は眼頭より老いぬ 不機嫌な夫なり梅雨の残り雨 

2015.08.07 06:15

穹

荒梅雨や寺の石仏石と化す 釈迦は穹親鸞は土牡丹咲く 死ぬときはつねの顔もて朴の花 大毛虫うんちやうんちやと坂上る 引率の列はや崩れ蛇苺 篝消ゆ鵜川一途に海を指す 

2015.07.01 23:55

香

手櫛もて薫風髪に梳き込みぬ 一階の酢の香二階の涼気かな また別の顔を鏡に五月果つ 身中に睡魔棲みだす夏はじめ 瀬に淵に闇降るを待つ鵜飼待つ 火の粉浴び荒鵜潜るは生きる為 

2015.06.04 01:20

融

爆発の如き落花の下に立つ 花水木白もて空に融けさうな 春愁や手中に廻す胡桃二個 葉桜の触れて川幅定まれり 峰々の白雲吐けば五月来る 薫風や峡なほ深く人家あり 

2015.05.10 06:30

鴉

峡の名のこれより分かれ初桜 唇の次の語恐れ春寒し 黎明や柵に鴉の交尾みをり 鳥ごゑをこぼしつ春の白雲は 両眼に咲き満ち花の律儀なる 弥生尽十指の爪を切り揃へ 

2015.04.02 03:15

星

閉ざされし店ばかりなる四温光 春寒く人の肉欲る葬りの炉 花うぐひ水湧く星が宙に浮き 眼閉ぢれば龍太開ければ春の雲 津保川の水の里子の犬ふぐり 山茶花や膨張つづく美濃の山 

2015.03.10 07:15

壁

千両のまことしやかに人迎ふ 寒の闇壁より剥がれ人となる 寒星のしづかに湧く地鈴鹿とは 耳鳴りの止まず春雪止みし夜も 美濃山塊二月の川を絞りだす 春近きナナハンにやや殺気あり 

2015.02.03 04:50

雪

裏木曾や雪嶺をもて天支ふ 白布干すわつと冬日の集まり来 酒買ひに出て冬の日に背を射らる 冬日向しりとり遊びパンで果つ 初空や徹頭徹尾諷詠派 とめどなく雪降りとめどなく孤独 

2015.01.10 06:50

灯

冬ざれの果ての集落そして山 目薬のおほかたこぼれ小春空 秋の灯やペンつぎつぎと文字生みぬ 冬の雨とは音たてぬ雨のこと 熱燗や無しとは云へぬ名誉欲 龍太の地踏みぬ秋冷まとひつく 

2014.12.03 07:02

痩

木曽川の瀬の石ころの痩せて秋 白菊や死は一瞬に怒り解く 腕に抱く赤子笑むとき爽涼と 霧流る眠れぬままの『歎異抄』 冬が来る豹が大地を踏むやうに のっぽビル痩せビル太っちょビル小春 

2014.11.03 07:01

増

うつし世の何掴まんと曼珠沙華 鯖雲の増殖夜となりて止む 駆けて子の三着なりぬ運動会 桔梗一輪褒貶は父になし 銀漢や師の遠しとも近しとも 寝返りし赤子に秋の暮迫る 

2014.10.10 02:10

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