灯取虫まづ眼が眠り脳が寝て 

キーボードひたすら叩く暑の盛り 

音もなく雲海峯へ崩れ落つ 

金輪際会はぬ人の名夏猛る 

夕顔や人は眼頭より老いぬ 

不機嫌な夫なり梅雨の残り雨 




飯田蛇笏に始まる『雲母』には「人温」という言葉がありました。誰が言い出したのか分りません。しかしこれは

雪に辞す人に手燭を心より 蛇笏

どの子にも涼しく風の吹く日かな 龍太

が示すように、飯田蛇笏から飯田龍太へ、そして現在の戸主である秀實氏へ引き継がれている飯田家独特の心の温かさを示したものです。雲母俳人は作句や選句の繋がりを通して「人温」を感じることができました。雲母俳人は俳誌が単に優れた俳句作品の場だけでないことに誇りを抱いていたのです。

「俳縁」というものにも意義を感じます。よい作品を生み出すには言葉以外の働きが背後にあるのではないかと思うのです。


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