冬ざれの果ての集落そして山 

目薬のおほかたこぼれ小春空 

秋の灯やペンつぎつぎと文字生みぬ 

冬の雨とは音たてぬ雨のこと 

熱燗や無しとは云へぬ名誉欲 

龍太の地踏みぬ秋冷まとひつく 




11月11日山梨県立文学館横に飯田龍太文学碑が建立されました。碑に彫られた作品は句集『山の木』にある「水澄みて四方に関ある甲斐の国」の一句。

龍太先生は「ほんとうに秀でた第一級の俳句は、碑には不向きではないか、と思われる」と言われました。確かにそうかも知れません。句碑を建てることでその場所の価値が上がるわけでもないし、建てた人が一流の俳人と認められる訳でもありません。しかし俳句作品の中には自ずから句碑に相応しい品格を蔵して生まれるものもあります。「水澄みて」の一句は将にそれであることに間違いありません。

甲斐はこの一句でもって莞爾しました。言ってみれば甲斐の国の差し出す名刺とも言うべき一句であると申せます。


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