裏木曾や雪嶺をもて天支ふ
白布干すわつと冬日の集まり来
酒買ひに出て冬の日に背を射らる
冬日向しりとり遊びパンで果つ
初空や徹頭徹尾諷詠派
とめどなく雪降りとめどなく孤独
昭和43年に『雲母昭和年代句集』が出ている。当時の代表的雲母作家270名が参加。飯田龍太選による雲母の句風がどのように形作られたかを知るには良いお手本である。
その中から少し抜粋してみる。
まず青木文恵作品。
「夜の蜘蛛鳴いたと思ふ夫の留守」
「足音に憑かれて暗き十二月」
人は不安の中に生きると言った人がいるが年齢的な若さが不安感を増幅し固定化することがある。そうした思いを示すには俳句の短絡性が作者の場合には適していたようだ。
「みちのくは初夏石階の端水漬き」
の明るさもあるが。
次は浅井一志作品。
「泣かんばかりに柑橘の日向見ゆ」
「一木一草自愛の秋のすむ故郷」
地に足を置いて自然を眺めた作品。足の見えない俳句は脆弱である。
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