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  • 月刊俳誌 -流-
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詰

髪洗ふひと日の悲喜を流すごと 山々の影引き連れて夏日去る 油照り喉に詰まりし売り言葉 蜻蛉飛ぶあたかも意志の飛ぶごとく 秋めくや百の田を過ぐ雲の影 秋真昼香車打たれし角の前 

2016.09.30 09:40

転

夕空の剥落に似てかはほりは 我無言父又無言冷奴 水槽の金魚月日を持て余す 大瑠璃のこゑある森の割れ目かな 西瓜種吐き出す罪を吐く如く 夏空や稲葉の城の転げさう 

2016.08.02 01:10

湧

捩らねば咲けぬ捩花捩れ捩れ 夏の雲湧き石仏は石と化す 病む人に短夜長し闇重し 白日傘たたみて顔の皺増やす 完璧な蜘蛛の囲へ月昇りけり 老齢のねたみを隠すサングラス 

2016.07.01 00:55

虚

眼開けば誰もが詩人若葉光 十薬と云ふ渾身の花十字 更地まだ売れず人来ず五月過ぐ 梅雨寒し年譜は辛き日々記さず 土降るに似たり虚偽とか虚栄とか 春の鳶フォッサマグナと謂ふ亀裂 

2016.06.02 22:25

絶

春愁に加へ下血の哀しみは 寝て覚めて絶食三日後の春日 春夕焼電車地下へと潜りゆく 御嶽の霞へ鳥の十羽落つ 薫風や君よワルツを弾きたまへ 伊吹より雨走りくる花のあと 

2016.05.03 01:35

線

小綬鶏のこゑの呼び出す朝の池 歳月の目盛消え去るフクシマ忌 少年の視線の先の春日傘 黄蝶来て白き蝶来て昼の土手 手庇の白山はやも青霞 春の渚音に遅れて波寄せぬ 

2016.04.06 22:55

厳

耳鳴りは脳窄む音春疾風 フクシマに私は居るか木芽吹くか 田二枚を売る旗鳴らす風二月 紅梅や美濃華厳寺は雨に昏れ 雪解風哀しみは身を縦に裂く 美濃の山なべて善相春深む 

2016.03.02 01:50

辺

鬱々と寺へ二月の闇降りぬ 凍光や野をたつ鳥のひそやかに 立春の風駈け下る瓢岳 寒明けや山を畏れて山恋うて 抱く児の眼に如月の街しづか 池の辺に鳥見ぬ日なり風邪心地 

2016.02.05 08:20

紺

喩ふれば紙の表裏ぞ去年今年 古日記果つ褒貶も多事もなく イヤホンはカーペンターズ冬深む 一月の雪峰紺に漂へり 枯れ尽くす山へこゑあげ一寒村 冬の鹿ドドと天地を驚かす 年新たジャズの後にはラヴソング 

2016.01.01 01:20

鎖

口開けば愚痴や閉ぢれば白き息 富家貧家隣りて冬の日を浴びぬ 選ぶなら運より才気木の葉髪 山麓の灯の鎖を為して十二月 ふと睡魔憑く枯園のベンチかな 湯豆腐や多弁の友をもてあます 

2015.12.02 04:55

列

黄鶺鴒見しをひと日の始めとす 高速の車列の尽きず鵙日和 稲雀一羽降りればみな降りぬ 木曾谷の底の集落花八ツ手 読まぬ家書増え十月も済みにけり 冬に入る中耳に蝉を棲まはせて 

2015.11.04 03:45

長

身に触れて去りゆく風を秋と云ふ 着替えても流星はまだ胸にあり 夜の長し父のとくとく諭すごと 妻と来て二百二十日の湖の風 群れ咲くは排撃の意思曼珠沙華 注射打つ一瞬長し九月の陽 

2015.09.30 21:15

俳句集<流>

俳人・清水青風が発行する月刊俳誌「流」のバックナンバーを掲載しています。毎月主題を変える連作俳句と手記をお楽しみください。

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