捩らねば咲けぬ捩花捩れ捩れ 

夏の雲湧き石仏は石と化す 

病む人に短夜長し闇重し 

白日傘たたみて顔の皺増やす 

完璧な蜘蛛の囲へ月昇りけり 

老齢のねたみを隠すサングラス 




昭和55年俳句に手を染め『雲母』に入会、同時に『青樹』主宰の長谷川双魚氏の句会へ通っていました。双魚作品はまさには才気煥発。

冬の航跡老いのひろがりゆくごとし

冬扇おもひ出せしが忘れけり

ざんばら髪の山彦あるく油照

盲人が花すこし買ふ夏景色

金貸してすこし日の経つ桃の花

曼珠沙華不思議は茎のみどりかな

など、余人の追随できぬ世界を生み出した俳人でした。

他にも「厠紙辛夷明りに減りゆけり」「首出して湯の真中に受験生」「蝉の穴淋しきときは笑ふなり」など印象的でした。

双魚氏は昭和61年句集『ひとつとや』で第20回蛇笏賞を受賞、昭和62年89歳で亡くなられました。


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