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  • 月刊俳誌 -流-
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囲

潜る親を見つつ潜れず軽鴨(かる)の子は日暮るるや蜘蛛の囲のまだ未完成蝉の死のあり魂を抱くかたちゆるやかに老いぬ日射しの秋めけば標高二百やや秋空に近づきぬ盆踊りをみなら笑みもこゑもなく 

2017.09.29 15:05

鬱

煩悩も芥も流し夏の川枯るること知らぬは哀し水中花噴水の伸びて縮んで子が跳ねて退屈で鬱になるかも金魚たち南吹く離島を今も獲り合ひぬ盆の月身にメス入れしこと三度(みたび) 

2017.08.31 00:30

器

美濃と云ふ器へ夏の川注ぐ旭光や飛び立ちさうな合歓の花夏盛ん雲吐く山と吸ふ山と捩花の捩ぢり疲れて夕日浴ぶ化粧とは将に化け方四葩咲く蟇出づる宙(そら)と交信するために 

2017.07.31 00:00

潜

若葉光尾張へ注ぐ木曾の水水中の修羅を生むべく鵜の潜る麗かや美濃を美州と云ふことも緑濃し耳にラバーズコンチェルト五月かな鳥の鋭声が交叉して一脚の椅子買ひ座せば夏めきぬ 

2017.06.29 15:00

走

春夕焼赤子乳房のほか知らず春の峰美濃を美州と云ひしこと陽炎の坩堝へ走者また走者龍天に登りて妻の機嫌よし蒲公英や子は陽に遊び風に舞ひ畦厚く塗り父祖の田の水封ず 

2017.05.30 15:00

光

四月来るひかりの舟が着くやうに淡海を目覚めさせんと菜花咲く春疾風言葉は鉄砲玉に似て紅椿恋をこひつつ晩年へ新しき椅子心地よし水温む殺気あり丹色のまじる春月は 

2017.04.30 10:25

指

皺の手の皺を殖やして冴え返る三月は庭の木々より生まれけり面影はいつも不意なり春ショール指間より水漏るるごと二月過ぐ指折つて二歳と示す春着の児春光や耳にショパンの流れ込む 

2017.03.30 15:10

軸

登校の声雪面をはずみ来る玲瓏たる冬の嶺なり龍太なり冬落暉ギヰと地軸を廻すのは才子にも与太にもなれず二月の陽個体百密に夜明けの水鳥は冬の滝青と碧とを繋ぎ落つ 

2017.02.28 03:13

麓

生後二萬七千余日初日受く風疼く噂消えてもまた噂冬空へ古書百冊を並べ売る人は灯を麓に連ね年迎ふシベリウス聴けば冬空かぶさり来美濃の空尾張の空と繋ぎ冬 

2017.01.31 01:37

留

伊吹嶺に星集ひゆく冬はじめ妻留守の十二時打てば木枯しす風音のすれど風来ず冬桜降誕祭耶蘇となる意志亳も無し冬めくや泣くはひとつの救ひにて冬月や思慕も恋慕も胸の底

2016.12.31 08:26

闌

月光のいま山坂を攻めのぼる 秋闌けて峰八方に龍太の眼 真珠抱き貝の眠れる星月夜 大方は読まざる書籍そぞろ寒 句稿回す秋のしづかな刻が好き 贖罪のごと月光に身を晒す

2016.11.30 02:20

逝

逝く人に弔ふ人に秋の虹 缶瓶の収集日もて九月果つ 鮎錆びて美濃連山の澄むばかり 蟋蟀や一ケ寺黒き影と化す 秋の夜や熟考は紺思慮は青 眼鏡はづして秋嶺を近く見る 

2016.10.31 09:29

俳句集<流>

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