煩悩も芥も流し夏の川


枯るること知らぬは哀し水中花

噴水の伸びて縮んで子が跳ねて

退屈で鬱になるかも金魚たち

南吹く離島を今も獲り合ひぬ

盆の月身にメス入れしこと三度(みたび) 




句集『羽羽』で本年度の蛇笏賞を受賞された正木ゆう子さんに「青銅亡く青風のあり青山河」の一句があります。 

金子青銅は20代から病と闘い、40代には死の瀬戸際まで行きました。輸血を重ねても下血が止まりません。そのとき彼が詠んだ一句は「今生はちぎれちぎれや血止め草」でした。 

ところが奇跡的に、本当に奇跡的に手術が成功し回復しました。そこで彼は詠みました。「にんげんは元来強し土用の芽」と。

しかしその後肝炎を患い、平成22年8月8日、66歳で亡くなりました。最後の句集には「いのち賭け命を摑む膩蝉」の一句。命を摑むことに懸命な一生でした。今年は金子青銅の七回忌になります。


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