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  • 月刊俳誌 -流-
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恋

空高く地に深く佛御座す秋漁り過ぐ鵜舟は闇の山背負ひ父母のこと丸葉縷紅の咲き出せば静謐の山河残して帰燕かな夏果てぬ恋知りそめし少年に美濃の地を割る川三つ秋はじめ

2019.09.29 21:30

夏

暑うして木々の勢ふ木曽路かな血脈のまた伸びて夏盛んなり通読の一書積み足す暑き部屋炎天下地図に無き地を行く如し眼前を若き我行く青野かな譬ふれば巨人の如く盛夏来し

2019.08.30 21:25

武

沈黙のままの龍太に梅雨果てぬ棒立ちの身へ七月の直射光サングラス美女ならざるも美女なりぬ涼風や武弁の系図広げ見る閉ぢてまた開く扇に駿馬の絵尾根細し罷り出でたる大ムカデ

2019.07.31 06:00

耐

半島のしづかに春の海抱く青虫を襲ひし蟻の百余り雲雀地に下りず連山日を撥ねず百日の視線に耐えて百日紅雨意孕み五月の山は丈揃へ君はまだマルクス読むか夏はじめ

2019.06.29 22:25

育

草青む天日遅々と伊吹峰へ雉子鳴きて朝の天地の幕揚げぬ刃物町寝釈迦の如き山を据え若鮎を育む水の透く日なりとねりこの脱皮促す春日かな生涯に師はひとりのみ春の風

2019.05.30 06:00

翼

四月来る美濃は陽気な雲浮かべ   誓子忌や国捨てざれば立志無し銀翼の点となり消ゆ春の空花粉症斯くも辛きは何の咎春月を仰ぐ銀河の端にゐて春の夜や地下水脈の音聞かむ

2019.04.29 22:25

祖

恵那山の朝の霞へ鳥の落つ春の空歪めて巨大ビル建ちぬ群れ咲くは陽へのあこがれ犬ふぐり鳥曇り美濃路はなべて坂ばかり人の祖は海より来たり春夕焼春の山重ねて故国闇となる

2019.03.31 02:15

龍

年新た飯田龍太と云ふ巨人白梅や龍太のあとに龍太なし飯田龍太消えて幾年冴返る梅の空見上げて飯田龍太の忌二ン月や龍太記憶の底に住む白梅忌と為すゆゑ龍太許されよ

2019.02.27 21:30

寒

寒雲に湧き出て飛騨の山となる冬帝の山降り来るは駆け足ではらからのひとり耶蘇なり年新た冬木とは空を刺す木々友病みぬ擦れ違ふひとの眼にある寒気かな湯に沈み十指広げて春待ちぬ

2019.01.31 06:55

器

鳰の海てふ水の器の地も冬へ泣き顔は人には見せず冬鏡小鳥来る家々のまだ覚めざるに黄落を急く木急かぬ木美濃は晴れ孤絶とは山頂に城据ゑて冬土と云ふ物埋めるもの冷ゆるもの

2018.12.30 23:05

応

ゆるやかに地を犯すごと夜寒かな虫のこゑ木曽へ繋がる美濃の闇幼子の笑み応えして秋日濃し身中に妬心棲みつく小六月蔵の影濃くして月の昇りけり秋夕焼思想はなべて虚構にて

2018.11.30 03:28

滴

曼珠沙華土中より紅絞り出す秋深む美濃も奥なる家三戸甲冑の口何か告ぐ秋真昼九月尽雨滴の数の水輪生み鷹か鳶か一枚の羽根拾ひけりコスモスの揺るるは遠き恋に似て

2018.10.31 05:34

俳句集<流>

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