半島のしづかに春の海抱く
青虫を襲ひし蟻の百余り
雲雀地に下りず連山日を撥ねず
百日の視線に耐えて百日紅
雨意孕み五月の山は丈揃へ
君はまだマルクス読むか夏はじめ
飯田龍太の文章に東京拘置所の死刑囚との交流を記したものがあります。
初めに送られて来た二百句ほどの中には「寒夜この死の音消ゆる壁の中」のような優れた作品がありました。以後毎月選を受ける作品が送られてきましたが2年後にハタと止まったとのことでした。
筆者が岐阜刑務所のクラブ活動の一環としての俳句指導に通い始めてからもう6年が過ぎようとしています。クラブの参加者は熱心に毎月五句を提出します。内容は収監される前のこと、刑務所内のこと、家族のことなど様々です。
「新緑を格子窓より眺めけり」「リンゴ剥くこの手で人を殺めけり」「保護房や暗き色為す七変化」「万病の薬の草も枯れにけり」などなど。
異色の人生模様の作品に接していると言ってよろしいでしょう。(青)
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