暑うして木々の勢ふ木曽路かな
血脈のまた伸びて夏盛んなり
通読の一書積み足す暑き部屋
炎天下地図に無き地を行く如し
眼前を若き我行く青野かな
譬ふれば巨人の如く盛夏来し
自分の旧作を見るのは恥ずかしさを伴います。俳句を始めた動機はあまりはっきり覚えていません。飯田龍太主宰の『雲母』で友人の金子青銅氏は既に名をあげていました。『雲母』に入会したのは確か四十代に入る少し前だったと思います。俳句のあれこれを彼に教えたもらい、投句してみました。
五句投句した中で次の二句が飯田龍太選に通り初めて『雲母』に掲載されました。
大露の雲をこらへし部落かな
月の出に繋ぐ指なほ幼なかり
現在では「部落」の語は安易に使えませんし、二句目などは親として大甘の内容です。龍太先生も採るに迷われたことでしょう。しかし始めて雑誌に載った二句は初学の胸に焼きつきました。以降、俳句にのめり込んで行く切っ掛けとなった二句でした。(青)
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