鳰の海てふ水の器の地も冬へ

泣き顔は人には見せず冬鏡

小鳥来る家々のまだ覚めざるに

黄落を急く木急かぬ木美濃は晴れ

孤絶とは山頂に城据ゑて冬

土と云ふ物埋めるもの冷ゆるもの




1ヶ月程前、東京の知人から電話があり高畑浩平氏のご逝去を知らせてくれました。浩平氏は生一本の『雲母』の俳人であり、第46回角川俳句賞受賞者でもありました。受賞後、浩平氏、金子青銅氏、小生の3人で既に雲母を終刊されていた飯田龍太先生を訪れたことがあります。龍太先生は「浩平さん、良かったね」と言葉をかけておられました。

句風という言葉があります。

「雲の辺へ子を生みにいく紅鮭(あめのうお)」

「月明や土に消えたる墓の数」

「ぶすぶすと一ノ矢二ノ矢曼珠沙華」

「山焼きし匂ひがぬつと奈良の町」

など、浩平氏らしい作品でした。

独自の句風を示すのは難しいことですが、浩平氏はそれを体得した俳人であったと思います。また一人惜しい雲母俳人を亡くしました。(青)

0コメント

  • 1000 / 1000