曼珠沙華土中より紅絞り出す
秋深む美濃も奥なる家三戸
甲冑の口何か告ぐ秋真昼
九月尽雨滴の数の水輪生み
鷹か鳶か一枚の羽根拾ひけり
コスモスの揺るるは遠き恋に似て
『福田甲子雄全句集』(ふらんす堂)が出版されました。瀧澤和弘、斎藤文子、保坂敏子の3名が刊行委員として努力され日の眼を見た一書です。福田氏の全俳句作品、自句自解、文章等が記載されています。
その作品は「生誕も死も花冷えの寝間ひとつ」「桃は釈迦李はイエス花盛り」「稲刈って鳥入れ代る甲斐の空」「鑑真の眼か堂守の埋火か」「天辺に個をつらぬきて冬の鵙」など充実したもの。
残念なことは病のため師の飯田龍太先生より先に逝去されたことです。
「わが額に師の掌おかるる小春かな」は氏を知る人の心にいつまでも残る一句です。
最後にお会いしたのは『雲母』終刊2年後、龍太先生と共に飛騨高山を訪れられた時でした。にこやかなお顔が胸から消え去ることはありません。(青)
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