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涼

秋なりき飯田龍太と云ふ人は ファックスの白き舌出し夏果てぬ 新涼や道問ふてまだ分からざる 耳鳴りも加へて虫の夜を寝落つ 人すでに九月の海の紺に倦む 今生は子を生すところ鳳仙花 

2013.09.08 00:04

山

炎天や獄舎へ鉄扉又鉄扉 墓へ手を八月母の生まれ月 夏山を追ひ夏山に追はれ飛騨 朝顔や砥石の上を刃の走り 指圧院夏の乳房を圧し臥す また生を受くならこの地さるすべり

2013.08.07 00:05

樹

水追うて水次々と追うて滝 京団扇絵本は人を殺めざる 樹林帯抜け空へ出し登山杖 涼しさや眼鏡ことりと置く音も 蚊遣火や山くろぐろとかぶさり来 空の紺絞りて茄子の色と為す 

2013.07.08 00:02

底

古障子閉めて夏野を封じけり 海底へ沈みし夏の日のいくつ 夏霧の底に駅舎のまだ覚めず 川底を水削りゆく桜桃忌 著莪の花石屋に雨の降りつづく 尾の微動止まりくちなは全身死 

2013.06.06 21:30

樫

川風に山風の添ふ五月かな 雉子鳴くや沖といふ名の田が拓け 師の里は立夏の風を生むところ 白シャツに鎖骨のぞかせ夏はじめ 山々はかひな五月の美濃を抱き 鳥ごゑに応へしは樫若葉かな 

2013.05.06 23:55

花

ガリバーの眼をもて跨ぐいぬふぐり 春耕の里へとなだれ美濃の山 揚雲雀友訪ふときも辞すときも 伊吹より恵那山までの花浄土 花びらを乗せさざなみの幾千万 花の大門根底に仏祖あり 

2013.04.07 12:30

音

杉倒す音の中なる菫かな 春寒の闇を抜けゆく一宇あり ひら仮名を読める子書く子水温む 覇王ともなれず山辺の畑焼きぬ 蛇穴を出でよ一水音たてよ 春月やものの怪はまだ音たてず

2013.03.06 21:15

満

地吹雪や列島は背をのけぞらす 水音の谷に満ちゆく福寿草 日本の臍の地に住み薬喰 どの店もシャッター下ろし底冷えす 風花や城の記憶に火と飢ゑと ひかり得て瀬の音追ひて芹の水

2013.02.07 00:40

雪

師の国の遠し雪嶺なほとほし 救急車ばかり耳にし松過ぎぬ 寒天へ欅愚直に枝を張り 冬の町記憶は霧の底ひより 田に降りて御身すこやか冬の鷺 美濃といふ器大きく寒明くる 

2013.01.03 04:40

始

一山のいのち一縷の冬の山 綿虫の飛ぶ意思のあり意思のなし 眼底にあり父の忌の白障子 まぼろしの山犬ならむ谿跳ぶは 雪雲のその一端の伊吹山 刃物町年の始めの鉄打ちぬ 

2012.11.30 22:30

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