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  • 月刊俳誌 -流-
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易

何をもて美人不美人盆踊りホキホキと背の骨鳴れば爽やかに音消して地を這ふ風を秋と云ふ晩夏光誤解は易々と生まれけり秋暑し芭蕉に惟然会ひし日も青大将這ふも泳ぐも音たてず

2018.09.30 05:31

泳

南風は海亀の死ぬ小島よりまどろみは馳走に似たり風涼し瀬を飛びて瀬の音聞かず糸とんぼ山々を更に高めて南風吹く老残は吾に無きもの草田男忌盆の山見て遠き日は遠きまま

2018.08.31 13:34

潤

ふるさとは訛りの坩堝夏つばき海溝へ沈みつ浮きつ夏の潮雨滴百・万・億・無量・青葉かな君熱く龍太を語れ夏の嶺南風は海図示さぬ孤島より六月の雨こそ四面楚歌に似て

2018.07.30 22:10

道

チョトコイと小綬鶏の呼ぶだから行く風音と空の色変え五月果つ父に無き日々を過ごしてまた夏へ夜明けより峡へ落ち込む梅雨の雲鉄塔の天突けば街五月雨るる道暑し蚯蚓ひたすら死へ這へり

2018.06.29 22:40

成

春深し尾張潤す木曾の水大方は成就せぬまま猫の恋地の霊を闇に呼び出す藤かづら柳の芽川はむかしの音に暮れ春祭ひよろりと鳶の舞ふことも金子青銅消えて八年春夕焼

2018.05.30 21:40

縁

身中に鬼棲む如し春の風邪壺焼や縁濃きひと淡きひと明らかに女はずるし四月馬鹿山巓に城漂へり美濃は春万物の中のひとつとして田螺青春の誰彼遠し啄木忌

2018.04.29 16:04

告

人の告ぐ春は名のみを人に告ぐ燗酒や脂粉の香には遠く棲み山裾へ千歩春田へ三百歩セーターに手出て首出て童女なり晩年の父春寒を厭ひけり犬ふぐり咲き秒針の急ぎ過ぎ

2018.03.30 22:00

連

雪峰を北に引き連れ伊吹嶺は雪原の果てにお伽の街湧きぬ鰤起しかの山の端の閃光は置き場所を変へれば忘れ冬帽子春陽射す釘の頭は扁平で梵刹の雪は真闇を剥ぎをりぬ

2018.02.27 15:25

帝

冬帝へ美濃一国を献上す下町の灯に灯をつなぎ冬深む三途の川渡るなら柿食ひながら村人は大方素直十二月山眠る記憶の父のいつも笑むわが生は人畜無害露時雨

2018.01.30 23:25

色

金色を放ち聖夜の仏具店寒月の病む色病める町照らす眼開けば冬田閉ぢれば師の痩躯血糊とも言える色もて冬日出づ極月の闇に鎖を為す麓の灯喜寿米寿健やかなりぬ年新た

2017.12.30 15:13

時

       百歳へ生きんと決めし文化の日月の道記憶の底のをみなたち柿喰ひつ三途の川を渡りたし山茶花散る空より時を剥がすごと動脈にステント二本小春風寒気地に湧くか空より降り来るか

2017.11.29 23:25

過

       夜な夜なの鬼女の簪曼珠沙華君はもう京過ぐあたり月も出て地虫鳴く夜の深さを積むばかり落し水雲を追ひ越す雲のあり秋晴れや散華の如く言葉湧く秋日濃し馴染みて和さぬ人のこと

2017.10.31 00:05

俳句集<流>

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