人の告ぐ春は名のみを人に告ぐ
燗酒や脂粉の香には遠く棲み
山裾へ千歩春田へ三百歩
セーターに手出て首出て童女なり
晩年の父春寒を厭ひけり
犬ふぐり咲き秒針の急ぎ過ぎ
金子兜太氏が逝去されました。戦後俳句が前衛、社会性、平和など様々な様態を纏って生きてきた中で絶えずオピニオンリーダーとして注目された俳人でした。
昭和時代には飯田龍太、森澄雄両氏と共に俳壇のリーダーとしての評価を受けておられました。龍太、澄雄の両氏が早く亡くなられた後は金子兜太氏の独壇場であったと申せます。その兜太氏が亡くなられたのですから将に巨星落つの感があります。
兜太氏が長生きされた分だけ、俳句界は大きな影響を受けてきました。しかしこれからはその反動が生じてくることでしょう。その波がどのように動くのか、見守っていくのは大変興味深いことです。(青)
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