冬帝へ美濃一国を献上す

下町の灯に灯をつなぎ冬深む

三途の川渡るなら柿食ひながら

村人は大方素直十二月

山眠る記憶の父のいつも笑む

わが生は人畜無害露時雨




講座を含め毎月13の句会を開いています。句会は異なりますが、70歳代の男性Sさんと30歳代の女性Hさんの2人の全盲の俳人がおられます。Sさんは介添者と、Hさんは私の隣に座り一般の俳人同様に投句と選句を行います。視力を欠いても可能かという疑念を持たれるかも知れませんが、それはまったくの杞憂です。両人の例句を示してみます。


<Sさんの作品>

また一基崩るる暮石鵙高音

茸狩りの前夜に開く図鑑かな


<Hさんの作品>

人なるは仮初と知る虫の闇

雀蛤となるこの文は燃す


どれも健常者の俳句と異なるところはありません。障害を障害としないお二人に敬意を表したいと思います。


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